人生は一期一会。
思いがけず訪れた出会いが、その後の人生を変える日もあります。
出会いは突然。そして出会ってしまったら、目をそらせません。
何の話かって?

予定外の靴を買ってしまった言い訳です。
仕事帰りに立ち寄ったTrading Post SALON淀屋橋で目に留まったのは、カルミーナのサイドゴアブーツでした。
一般的なサイドゴアブーツよりも短い丈。
PALMAラストが描く、鋭さと優美さを備えたトウ。
そして、細かなシボからなめらかな艶へ表情を変える黒のユタカーフ。
当初探していた靴とは違いましたが、見た瞬間に「これは格好いい」と思い、試着した翌日には購入していました。


- カルミーナのサイドゴアブーツの特徴
- PALMAラストとユタカーフの魅力
- 実際に履いて感じたフィット感
- サマーウールパンツに合わせた見え方
- Trading Post SALON淀屋橋での購入体験
ほぼ衝動買い。一目ぼれでした
購入当時、探していたのは「Vフロント」と呼ばれる、ドレッシーな外羽根プレーントウでした。
近年は取り扱うメーカーが減っているのか、理想に近いモデルがなかなか見つかりません。
いっそ靴のビスポークに挑戦しようかと考えていたさなか、仕事帰りにTrading Post SALON淀屋橋へ立ち寄りました。
そこで偶然目に入ったのが、今回のサイドゴアブーツです。
探していた靴とはまったく違います。
それでも第一印象は、「何これ、めっちゃかっこいい」でした。
試着すると、エレガントながらうるさくない、絶妙なバランスにますます惹かれました。
しかも、私のサイズは最後の1点。
気がつけば取り置きをお願いしていました。
ビスポークスーツをオーダーした直後だったため、出費には少し迷います。
頭を冷やすために一晩考えた末、翌日の仕事帰りには再び店へ向かっていました。
フィット感を改めて確認し、そのまま購入。ほぼ衝動買いです。



要するに、一目ぼれでした。


カルミーナはスペイン・マヨルカ島の革靴ブランド


カルミーナ(CARMINA)は、スペインのマヨルカ島を拠点とする革靴ブランドです。
一族の靴作りは1866年から続き、現在も島内で生産されています。
グッドイヤーウェルト製法を得意とし、オックスフォードからローファー、ブーツまで幅広く展開しています。
以前からSIMPSONラストのジョッパーブーツを愛用しており、カルミーナを購入するのは今回が初めてではありません。
色気があるのに、いやらしくない。
端正な輪郭と、地中海らしい軽やかさをあわせ持つ、私の好きな革靴ブランドです。
参考:Carmina Shoemaker公式・ブランドの歴史
購入したカルミーナ「80850003」の特徴
まずは、今回購入したブーツの仕様をご紹介。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ブランド | CARMINA(カルミーナ) |
| モデル | 80850003 |
| カラー | BLACK |
| 購入サイズ | UK7 |
| 税込価格 | 126,500円 |
| ラスト | PALMA |
| アッパー | Black Utah Calf |
| ソール | シングルレザーソール |
| 靴幅 | EE |
| 製法 | グッドイヤーウェルト |
| 原産国 | スペイン |
一般的なサイドゴアブーツより丈が短い
最大の特徴は、履き口の短さです。
一般的なサイドゴアブーツというより、短靴の履き口を少しだけ上へ延ばしたように見えます。
パンツの裾から見える面積が小さく、ブーツ特有の重さや強い秋冬感がありません。
スラックスの下に収めても武骨になりにくく、スーツにも自然に合わせられる丈です。


短靴とブーツの中間にあるような軽快さ。
この独特なバランスが、サイドゴアブーツをドレッシーに見せています。


INCAとSIMPSONを融合したPALMAラスト


このサイドゴアブーツの木型は「PALMA」。
カルミーナの工場がある、マヨルカ島の都市名に由来する名前です。
PALMAは、フィッティングに定評のあるINCAのボディをベースに、SIMPSONのトウラインを組み合わせています。
土踏まずから甲を包むINCAの設計に、SIMPSONらしいスタイリッシュなつま先を融合した木型です。
私はSIMPSONラストのジョッパーブーツを持っていますが、その魅力はややチゼル気味に切り落とされたセミスクエアトウにあります。


PALMAにも同じ系統の表情があり、つま先のエッジは立っているものの、必要以上に尖ってはいません。
失われたロシアンカーフを再現したユタカーフ


アッパーには、フランス北東部のHaas Tanneriesで作られるユタカーフが使われています。
ユタカーフの背景にあるのが、かつてロシアで作られていた「ロシアンカーフ」です。
ロシアンカーフは、樹皮でなめし、白樺のオイルを染み込ませた革。高い耐久性と耐水性、独特の菱形模様を備えていました。
1786年、ロシアンカーフを積んだメッタ・カタリーナ号が英国沖で沈没します。
船は1973年に発見され、海底に約200年眠っていた革が良好な状態で引き揚げられたという、革好きには有名な逸話が残っています。
その後、伝統的な製法が失われるなか、ロシアンカーフの表情や性質を現代に再現すべく作られた革のひとつがユタカーフです。
9種類のオイルを含ませ、細かな菱形状のシボを施しています。
厚みがあり、触れるともちもちしていますが、見た目は無骨ではありません。
参考:ロシアンカーフの歴史(City of Helsinki)、ユタカーフの解説(Trading Post)
エラスティックを覆う短冊状のレザー
サイドゴア部分にも、ひと工夫あります。


伸縮するエラスティックの上に、細いレザーを何本も並べたデザインです。
レイジーマンシューズを思わせる意匠で、ゴム部分が大きく露出しません。
ステッチと革の短冊が控えめな装飾となり、一般的なサイドゴアブーツよりドレッシーに見えます。
着脱のしやすさを残しながら、機能部分をきれいに見せる仕立てです。
カルミーナのサイドゴアブーツをレビュー
端正なPALMAラストとショート丈を、ユタカーフのシボとサイドゴアがほどよくカジュアルダウンしています。
装飾がなくてもトウにしっかり表情がある
つま先は飾りのないプレーントウです。


装飾は控えめです。
だからこそ、先端の緩やかな丸みと両端のエッジが際立ちます。
輪郭は明確でありながら、印象はあくまで優美。
シボからなめらかな艶へ変わるユタカーフが美しい


一目ぼれの決め手になったのは、ユタカーフの表情でした。
甲から胴にかけては、菱形状の細かなシボがはっきりと残っています。
一方、吊り込みによって革が強く引かれるトウ付近では、シボがなだらかに伸びています。
豊かな凹凸から、つるりとした光沢へ。
光を当てると、胴部では細かなシボが点のように輝き、トウでは面として艶が現れます。
黒一色でも平板に見えず、なめらかなトウがPALMAの輪郭をいっそう引き立てます。
型押し革でありながら、ドレス靴の美しさを損なわない仕上がりです。
ドレッシーなのに気取りすぎない
細身のPALMAラスト、セミスクエアトウ、短靴に近いショート丈、エラスティックを覆うレザーの意匠。
さらに、ソールにはヒドゥンチャネルとフィドルバックが採用されています。


いずれもドレス度を高める要素です。
一方、型押しのユタカーフ、サイドゴア、ブーツという形は、足元を少しだけカジュアルへ引き戻します。
端正な木型と意匠でドレスアップし、型押し革とサイドゴアで、ほんの少しだけ力を抜く。
片方へ振り切らないバランスが、スーツにも普段着にも使いやすい理由です。
ヒールカップとソールまで美しい
後ろ姿を見ると、踵を包む立体的なヒールカップがよく分かります。
履き口が短いため足首まわりに量感が出ず、後ろから見ても軽快です。


ソールはシングルレザーです。
アウトソールの縫い目を隠すヒドゥンチャネルが施され、ウェスト部分には立体的なフィドルバックを備えています。
普段はほとんど見えませんが、靴を手に取った際の満足感を高めてくれる仕様です。
見た目については文句なし。
ただ、実用面だけで考えればラバーソールでもよかったと思っています。
雨に強いユタカーフだからこそ、天候を気にせず履けるソールなら、さらに使いやすかったはずです。
プレメンテナンスなしで履き下ろせる気軽さ


革靴を購入すると、普段は家でプレメンテナンスを行い、履きジワの位置まで慎重に決めます。
今回は購入時に店頭で軽くメンテナンスしてもらったため、自宅での作業は省きました。
後日、そのまま履き下ろしています。
ユタカーフ自体が多くの油分を含み、型押しによって履きジワも目立ちにくい素材だからです。
普段はブラッシングを中心にし、数か月に一度ほどアニリンクリームを薄く入れる程度で十分との説明でした。
高級靴ではありますが、神経質にならずガンガン履けるのはうれしいところです。


太めのグレーのサマーウールパンツに合わせてみました


購入日は、やや太めのグレーのサマーウールパンツを穿いていました。
PALMAは甲からトウにかけて細身ですが、太さのあるパンツへ合わせてもボリューム負けしていません。
パンツの柔らかなシルエットに、黒い靴のシャープな輪郭がほどよい緊張感を加えています。
ショート丈なのでブーツ特有の重さが出ず、裾から見える姿はほとんど短靴です。
意匠の少ないプレーントウのため、角度によってはやや面長に見えます。
私はつま先が長く見えるロングノーズが苦手なので少し心配しましたが、履いてみるとつま先が長い印象はなく、全体のバランスも良好。


私は革靴を履くと小指が当たりやすいのが悩みですが、このブーツは当たりが柔らかく、何度か外を歩いた現在も気になりません。
踵も自然に収まり、短い履き口でも抜ける感覚はありませんでした。


Trading Post SALON淀屋橋は靴好きがくつろげる店
Trading Post SALON淀屋橋は、淀屋橋ステーションワンの1階にある革靴のセレクトショップです。
インポートの本格靴を中心に、EDWARD GREEN、GAZIANO & GIRLING、CROCKETT & JONES、CARMINAなどが並びます。
なかでもEDWARD GREENの品揃えには力を入れているそうです。


壁一面に本格靴が並ぶ店内。眺めているだけでも楽しい空間です。
店員さんは各メーカーやモデル、ラストに詳しく、今回もPALMAとINCA、SIMPSONの関係を丁寧に教えてくれました。
コーヒーを飲みながら靴の話を聞き、気になるモデルをゆっくり試せる、リラックスした空間です。
試着の間には、当日履いていたEDWARD GREENのMALVERNを磨いてくれるなど、至れり尽くせり。
最近は少し手入れを怠り、くたびれ気味だった一足ですが、プロの手でツヤが戻りました。
購入した靴箱を抱え、良く磨かれたお気に入りを履いてゆく帰路は心が躍ります。
商品を選ぶ時間だけでなく、靴と付き合う楽しさまで感じられる接客でした。


本格靴が好きなら、淀屋橋へ行く機会に一度覗いてみてください。
買う予定がなくても、好きなだけ靴を眺めながら話を聞ける、居心地のよいサロンです。
参考:Trading Post SALON淀屋橋・公式店舗紹介
まとめ|ショート丈とユタカーフに惚れた一足
カルミーナのサイドゴアブーツは、シンプルなのに見ていて飽きない靴です。
- PALMAは鋭さと優美さを備えたセミスクエアトウ
- ショート丈なのでスラックスへ合わせやすい
- ユタカーフは黒でもシボと艶の表情が豊か
- サイドゴア部分のレザー意匠がドレス感を高める
- 太めのパンツに合わせても足元だけが長く見えない
- 小指への当たりは柔らかく、履き心地も良好
予定外の買い物でしたが、出会ってしまったのでしょうがありません。
これから神経質になりすぎず、ガンガン履いていきます。











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