導入文
セレクトショップのオリジナルスーツ、いわゆる「セレオリ」。 皆さんは、正直なところ、どんなイメージをお持ちでしょうか?
「有名ブランド品に比べると、やっぱり格下なのかな…」
「値段相応の作りで、本格的とは言えないのでは?」
もし、あなたが少しでもそう思っているなら、その考えは非常にもったいないかもしれません。

実は、優れたセレオリスーツは、多くの有名ブランドに引けを取らない実力を持っています。
この記事では、かつてスーツに全く興味がなかった私の価値観を根底から変えた一着、BEAMS F(ビームスF)のスーツをレビューします。
なぜこのスーツがこれほどまでに素晴らしいのか。 その秘密は、日本のスーツ業界を牽引する、あるファクトリーの存在にありました。
この記事を読めば、きっとセレオリスーツに対する見方が変わり、本当にコストパフォーマンスの高い、あなたのビジネススタイルを格上げする一着と出会うヒントが得られるはずです。
目次
「セレオリは中途半端」は大きな誤解!知られざる製造の裏側
スーツ選びの選択肢として、今や当たり前になったセレオリ。 しかし、その実態は意外と知られていません。 まずは、その基本的なところから見ていきましょう。
セレオリとは? なぜ誤解されやすいのか
セレオリとは、「セレクトショップ・オリジナル」の略称です。 BEAMSやユナイテッドアローズといったセレクトショップが、自社のブランド名で企画・販売している製品のことを指します。

そんなセレオリですが、しばしば『ブランド品より格下』というイメージを持たれがちです。 多くのセレクトショップが、海外の高級ブランドと並べて、比較的安価なオリジナル商品を展開しているからでしょう。
「作りが安いのに価格がそこそこ高い」「中途半端」というイメージとはそこから生まれるのだと思います。
しかし、「価格」と「品質」が必ずしも比例しないのが、セレオリの面白いところ。
実は一流。有名ファクトリーが手掛けるBEAMSのスーツ
全てのセレオリが同じ、というわけではありません。 特に、BEAMSの中でもドレス部門の最高峰レーベルである「BEAMS F」のスーツは、特別な存在です。
なぜなら、その多くが、日本国内でトップクラスの技術を誇るスーツ工場で縫製されているから。

その代表格が、今回ご紹介するスーツも手掛けた「RING JACKET(リングヂャケット)」です。 「国内既製服の最高峰」と呼ばれるリングヂャケット。その縫製は折り紙付きです。 着心地と立体感にこだわった型紙も見どころ。 BEAMS Fのスーツはセレオリと馬鹿にできない高いクオリティを誇っているのです。
私の価値観を変えた一着。BEAMS F リングヂャケット製スーツを徹底レビュー
それでは、私がスーツの世界にのめり込むきっかけとなった一着をご紹介します。 このスーツとの出会いがなければ、このブログは存在しなかったかもしれません。
見た目は王道。チャコールグレーの万能スーツ

一見すると、ごく普通のチャコールグレーの無地スーツです。 デザインも、ジャケットは「3つボタン段返り」、パンツは「ワンプリーツ」という、非常にオーソドックスな仕様。
【簡単解説】3つボタン段返りとは? 3つボタンのジャケットですが、一番上のボタンが襟(ラペル)の裏に隠れるように作られているデザインのこと。
派手さはありませんが、ビジネスシーンで困ることはまずない、まさに「王道」の一着です。
生地はイタリアの名門「ロロピアーナ社」製
このスーツに使われている生地は、イタリアが世界に誇る最高級生地メーカー「Loro Piana(ロロピアーナ)」社のもの。 その中でも「ジランダー」という、ハリとコシ、そして通気性に優れた生地が採用されています。

サラッとした肌触りで、見た目にも涼感がある。 日本の気候で言えば、春から夏、そして秋口までと、非常に長い期間活躍してくれる頼もしい生地です。
【衝撃の出会い】中古で2万円。試着で感じた、驚きのフィット感

このスーツと出会ったのは、意外にもリユースショップの「コメ兵」でした。 状態の良い中古品として、約2万円で売られていたのです。
正直、当時はまだスーツの良し悪しなど分かりませんでした。 しかし、試着室で袖を通して驚愕しました。

なんだこれ!? 体にぴったりフィットするのに、全く窮屈じゃない…!
ジャストサイズのジャケットは、腕を上げ下げする時に肩周りが突っ張るのが当たり前だと思っていました。 しかし、このスーツにはそのストレスが全くない。まるで自分の体の一部になったかのように、スムーズに動けるのです。
「良いスーツとは、見た目が格好良く、高級な生地を使っているもの」と思っていた私の固定観念が崩れました。
なぜ着心地が違う?秘密は「リングヂャケット」の卓越した縫製技術
では、なぜこれほどまでに着心地が良いのでしょうか。 その答えは、縫製を担当した「リングヂャケット」の技術力にあります。
国内最高峰のスーツ工場「RING JACKET(リングヂャケット)」とは?
リングヂャケットは、1954年に大阪で創業したスーツ専門のファクトリーブランドです。 「注文服のような着心地の既製服」を目指し、長年にわたって技術を磨き続けてきました。

その縫製技術は国内随一と評価されており、今や日本を代表するスーツブランドとして、確固たる地位を築いています。
体に吸い付くような着心地。パターンオーダーとは違う既製服の魅力
「自分の体に合わせるなら、パターンオーダーの方が良いのでは?」 そう思う方もいるかもしれません。確かに、安価で自分の体型に合わせて作れるパターンオーダーも素晴らしい選択肢です。
しかし、本当に優れた既製服は、その着心地において安価なパターンオーダーを上回ることがあります。
なぜなら、着心地の良さは、単に寸法が合っているかどうかだけでは決まらないからです。 人体の構造を理解し、動きやすさを計算した「立体的な縫製技術」があって初めて、本物の着心地が生まれます。 リングヂャケットは、まさにそのプロフェッショナル集団なのです。
肩回りの立体的な作り込みが、動きやすさの秘訣
リングヂャケット製のスーツで特に素晴らしいのが、「肩回り」の作りです。
ジャケットの肩は、人の体で最も複雑な動きをする部分。 ここに、最小限の芯地を使いながら、アイロンワークを駆使して丸みのある立体的なフォルムを作り上げています。

この「登り(のぼり)」と呼ばれる肩から首にかけての吸付き。 これが、動きやすさと、体型を美しく見せるシルエットを両立させているのです。
BEAMS Fのスーツはどんな人におすすめ?
この素晴らしいスーツを、私はどんな方に特におすすめしたいか。 3つのタイプに分けてみました。

量販店のスーツからステップアップしたいと考えている人
「そろそろ、新入社員の頃に着ていたスーツから卒業したい」 「ワンランク上の、本格的なスーツに挑戦してみたい」 そう考えている方にとって、BEAMS Fのスーツは最高の選択肢の一つです。 本格的な仕立ての世界への、素晴らしい入り口となってくれるでしょう。
コストを抑えつつ、本格的なスーツの着心地を体験したい人
リングヂャケットのオリジナル品は、もちろん素晴らしいですが、価格もそれなりにします(10万円以上が中心)。 その点、BEAMS Fのスーツであれば、リングヂャケット製の確かな品質を、より戦略的な価格で手に入れることが可能です。 私のように、リユース品を狙ってみるのも賢い選択かもしれません。
長く着られる、ベーシックで質の高い一着を求めている人
流行り廃りのない王道デザインと、確かな品質。 BEAMS Fのスーツは、まさに「長く付き合える」一着です。 大切に手入れをすれば、5年、10年とあなたのビジネスシーンを支える相棒になってくれるはずです。
まとめ:スーツの価値は、ブランド名だけでは決まらない

今回は、私のスーツ観を大きく変えてくれた、BEAMS Fのリングヂャケット製スーツをご紹介しました。
最後に、重要なポイントをもう一度おさらいします。
- BEAMS Fのスーツは、国内最高峰の工場「リングヂャケット」が手掛けているものが多い。
- 「セレオリ」と侮るなかれ。その品質は多くのブランド品に引けを取らない。
- 秘密は「立体縫製」。特に肩回りの作りが、抜群の着心地を生み出している。
- 本格スーツ入門や、コスパを重視する層にこそ、強くおすすめしたい一着。
このスーツとの出会いがなければ、私は今でも「スーツは窮屈な作業着」だと思い込んでいたことでしょう。
服の価値は、ブランド名や価格だけでは決して測れない。そのことを、この一着が教えてくれました。
もしあなたがセレクトショップでスーツを見る機会があれば、ぜひ「セレオリ」という先入観を捨てて、一度袖を通してみてください。
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